「エヴァを動かせる人間は他にはいない。生きている限りそうしてもらう。」

第弐話「見知らぬ、天井」での碇ゲンドウのことば。

セカンドインパクト以降、莫大な予算と人員を割いてエヴァを作り、第3新東京市を要塞都市として建設し、使徒の再来に備えてきました。
15年ぶりに使徒が現れ、その備えが役に立つことになりますが、使徒を撃退するためのエヴァ零号機、初号機ともに綾波レイ、碇シンジしか搭乗できず、わずか14歳の彼らに人類の命運を委ねる事態となりました。
エヴァパイロットが二人とも病院に入院するほどの怪我を負いつつも、

「エヴァを動かせる人間は他にはいない。生きている限りそうしてもらう。」

ゲンドウは赤木リツコに告げました。

ゲンドウがシンジに初号機に乗るよう言い渡した時に、ミサトがシンジを庇おうとしたり、シンジや部下などの前では言い表しませんが、リツコも幼い子供達に重荷を背負わすことに、他にやりようがないとはいえ躊躇いを持っているように見えます。
しかし、ゲンドウは我が子であっても容赦なく、大きな重荷を14歳の子供達に背負わせます。
そこには、ゲンドウが唯一執着する目的があり、物語が進むにつれて少しずつ明らかになっていきます。
自らの目的のためにはどんなことも躊躇わないゲンドウの姿は不気味でいて、しかし一貫してブレていないのです。

「一つ言い忘れてたけど、あなたは人にほめられる立派なことをしたのよ。胸を張っていいわ。」

第弐話「見知らぬ、天井」での葛城ミサトのことば。

別居していた父碇ゲンドウに第3新東京市へと呼び出された碇シンジは、再会を喜ぶ暇もなくエヴァ初号機に搭乗し、第3使徒サキエルと対峙しました。
訓練もなく、初めて乗った初号機で歩かせることで精一杯だったシンジは、使徒に一方的に攻撃されました。初号機の腕をもがれ、頭部を貫かれ、身動きがとれなくなった初号機でしたが、ミサトはシンジをた助けるためにエントリープラグの強制射出を指示しても反応がなくなり、完全に制御不能に陥ったのです。その直後、初号機は再起動し暴走の果て、使徒を活動停止させることに成功しましたが、シンジは装甲が剥がされた初号機の中に垣間見えた不気味な生命体を思い出して怯えることになります。

いきなり人類を守るために戦うことになったり、自らが乗った初号機の得体の知れなさで、現実をなかなか受け止めきれないシンジでしたが、ミサトは自らのマンションでシンジを同居させ、就寝前に

「一つ言い忘れてたけど、あなたは人にほめられる立派なことをしたのよ。胸を張っていいわ。」

と告げて、シンジのミサトとの同居生活初日は終わりました。

一人暮らしになりそうだったシンジを自らの自宅に同居させたり、第3新東京市をシンジに見せたり、ミサトはシンジのメンターのように心を砕いていきます。

「あら、希望的観測は人が生きていくための必需品よ」

第弐話「見知らぬ、天井」での葛城ミサトのことば。

2000年に発生したセカンドインパクトや新型爆弾の攻撃で首都東京は壊滅し、翌年長野県松本市を第2新東京市と改称して遷都しました。
その後、将来的に再び遷都するために、2006年に神奈川県箱根町に第3新東京市の建設がはじまり、第弐話時点である2015年の供用を目処に着工しました。
第3新東京市は将来的に首都の予定地として日本政府から予算を供出させるための方便で、実態は使徒迎撃専用要塞都市です。

戦闘用の設備など未だ建設中の第3新東京市の工事現場をミサトは赤木リツコと訪れていました。
プロトタイプの零号機、ようやくパイロットが到着したばかりの初号機、未だ完成していない迎撃用設備や要塞を目にして、ミサトは設備が整えば使徒を倒せる日が来ると期待しました。
そんなミサトに現実的なリツコがミサトを楽天的と揶揄しますが、ミサトは

「あら、希望的観測は人が生きていくための必需品よ」

と返します。

この後も度重なる使徒との戦闘の中で何度も難しい局面に晒されますが、ミサトは持ち前のポシティブさと頭脳をもって戦闘を采配し、時には無謀と言われつつも使徒を倒していくことになります。
私生活では自堕落な様子が描かれていますが、仕事ができるお姉さんでもあったのです。

「我慢なさい男の子でしょっ」

第壱話 「使徒、襲来」での葛城ミサトのことば。

3年ぶりの父との再会を果たした碇シンジでしたが、巨大な敵と戦うためにエヴァ初号機のパイロットになるよう言われ、躊躇ったのちに乗ることになります。
第3使徒サキエルがだんだんネルフ本部に近づいてきており、出撃が急がれていたとき、初めて初号機に搭乗したシンジはL.C.L.液を肺に取り込むのに四苦八苦しました。その様子を見て、葛城ミサトは

「我慢なさい男の子でしょっ」

と檄を飛ばしたのでした。

そのシーンの前、シンジがネルフ本部に到着する前、第3新東京市にやってきたシンジはミサトと待ち合わせをし、使徒との戦闘の真っ只中をかいくぐってネルフ本部にきたのでした。
その最中ミサトの運転する車の中での、

ミサト「可愛い顔して意外と落ち着いてんのね。…ごめんごめんおっとこのこだもんね」
シンジ「ミサトさんこそ年のわりに子供っぽい人ですね」

というやりとりがあり、シンジの返答を根に持っていたという流れがあってのミサトの檄なのでした。
シンジへ初号機に乗るようにゲンドウと赤木リツコが言った直後はシンジを庇って反対したミサトでしたが、シンジがエヴァに乗る決断をする前に、使徒の攻撃のせいで建材が落下してシンジに直撃しそうになった時、エントリープラグが入っていない初号機がシンジを守りました。
その様子を見てミサトは、シンジが搭乗してうまくいくと確信しました。余裕があったからこそ出た言葉だったのです。

「やっぱり僕はいらない人間なんだ」

第壱話 「使徒、襲来」での碇シンジのことば。

知り合いに預けられ父と離れて暮らしていたシンジは、父ゲンドウからの手紙で呼ばれ、3年ぶりに再会しました。
その日は奇しくも15年ぶりに使徒が襲来しており、戦闘のなかをかいくぐってなんとかネルフ本部にたどりつきましたが、父は子供としてのシンジではなく、巨大な敵と戦うための、エヴァ初号機のパイロットにするためのシンジを求めて呼び寄せたことを知ります。

「やっぱり僕はいらない人間なんだ」

母を亡くし父子だけの家族なのに、家族として求められていないことにシンジは深い失望を覚えたのです。

エヴァに乗ることを承諾できないシンジでしたが、シンジが乗らないのならとゲンドウが指示によって、深く傷ついた女の子がストレッチャーに乗せられてやってきます。
零号機のパイロットである綾波レイでしたが、傷ついた彼女に再び戦わせるよりはと、シンジは初号機に乗る決心をします。

シンジのセリフにはありませんが、エヴァのパイロットになることによって、他者から必要とされる人間になりたいように思えます。
「自らの存在理由」はエヴァ全話を一貫しての主要なテーマの一つとなり、シンジは悩み続けることになるのです。

「…私を殺したいのならそうして…いえ、そうしてくれると嬉しい…」

第弐拾参話「涙」での赤木リツコの言葉。

第16使徒アルミサエルとの戦闘で零号機が自爆し、パイロットの綾波レイの生存は絶望的かと思われましたが、レイは怪我だけで戻ってきます。
その後、リツコはゼーレからの尋問を全裸で受けました。その状態を「陵辱」とゼーレのメンバーに言われても表情を変えずに、自分は何の屈辱も感じていないと返しますが、その尋問が碇ゲンドウの差し金と知ると表情を一変させます。
ゲンドウは零号機パイロットの尋問を拒否し、レイの代理人としてリツコを差し出したのでした。

リツコは自宅に軟禁されていたシンジを誘い出すと、陰謀を探っていたミサトと共にターミナルドグマのレイが生まれ育った部屋や、失敗したエヴァの墓場を見せました。
そして、ダミープラグの元であり巨大な装置に着くと、中で無数のレイの形をしたものが揺蕩っていたのです。
それを、ただの入れ物とリツコは表現し、「だから壊すの。憎いから。」と、スイッチを押しました。
崩れていく無数のレイの入れ物だったモノたちを前に、リツコに不審な動きをさせないように銃を構えていたミサトに

「…私を殺したいのならそうして…いえ、そうしてくれると嬉しい…」

人の形をしたモノにすら負けたとリツコは泣き崩れました。

母ナオコと同じように、ゲンドウの計画に翻弄されるリツコの姿が憐れです。
そして、父親のそんな話を聞かされるシンジも気の毒でもありますね。

「悲しいと思ってるのに、出ないんだよ。涙が。」

第弐拾参話「涙」での碇シンジの言葉。

第16使徒アルミサエルが出現し、零号機が応戦しますが、使徒から侵蝕されます。弐号機は援護をしようにも、惣流・アスカ・ラングレーとのシンクロ率が低く、リフトから出ることなく撤退しました。
その後初号機が援護に出ますが零号機への侵蝕は進み、零号機から降りる指示を受けますが、A.T.フィールドが消滅し、使徒が初号機へ侵蝕することを恐れた綾波レイは、自らが使徒を抑え込むために使徒の侵蝕を促し、凄まじい爆音とともに零号機ごと自爆してしまいました。
使徒は消失しましたが、レイの生存は絶望的でした。

シンジは自室で、訪ねてきたミサトに

「悲しいと思ってるのに、出ないんだよ。涙が。」

と呟きます。
自らを庇うようにしてレイがいなくなった現実を受け入れられないのでした。

アルミサエル

第16使徒として登場。ユダヤ神話における「子宮」を司る天使。
DNAの立体構造を彷彿とさせるような二重螺旋の形をしていて、A.T.フィールドのパターンをオレンジと青のとで周期的に変化させる。
第12使徒レリエル、第15使徒アラエルに続き、「人の心」に触れようとし、零号機に侵蝕・融合しようとするが、零号機の自爆により消滅した。
レリエルと同じように侵蝕した本人を依代として使徒が人にコミュニケーションを取りました。

「鳴らない電話を気にしてイラつくのはもうやめるわ。あなたの心、受け取ったもの」

第弐拾参話「涙」での葛城ミサトの言葉。

大学時代のミサトと恋人同士だった加持リョウジはネルフの特殊監査部所属の諜報員でありながら、日本政府内務省のスパイであり、さらにゼーレから派遣されたスパイでもありました。
惣流・アスカ・ラングレーが来日するにあたり、随伴者としてネルフのドイツ支部から日本に出向してきた加持は、再びミサトに接近します。表面上拒むミサトでしたが、加持が独自に調査していた人類補完計画を巡る陰謀についての情報を得るためにも、男女の関係が復活しました。
三重のスパイ活動の中で、陰謀の真相に近づいていた加持は自身の置かれた立場の危うさをよく理解しており、ミサトとの逢瀬の最中に情報を記録したカプセルを渡します。その後、ゼーレへの背信行為のためか、何者かに銃殺されます。

その後第16使徒アルミサエルの攻撃から初号機を守るために、綾波レイは零号機を降りずに大爆発を起こし、使徒を殲滅しました。
碇シンジとミサトはレイが亡くなったと消沈していましたが、病院で目を覚ましたと連絡が入ります。

それまで加持からの遺言の「もし、もう一度会える事があったら、8年前に言えなかった言葉を言うよ。」という言葉から、加持からの電話を待っていたミサトでしたが、

「鳴らない電話を気にしてイラつくのはもうやめるわ。あなたの心、受け取ったもの」

と心を決めて、加持の存命中から薄々おかしいと気づき始めていたネルフに対する疑惑を深め、加持から引き継いで陰謀を追いかけ始めます。

「EVAシリーズ。アダムより生まれし人間にとって忌むべき存在。それを利用してまで生き延びようとするリリン。僕にはわからないよ。」

第弐拾四話「最後のシ者」での渚カヲルの言葉。

セントラルドグマにて、第17使徒ダブリスとしてのカヲルが遠隔操作する弐号機と、それに対するシンジが操縦する初号機。
それを眺めてカヲルは

「EVAシリーズ。アダムより生まれし人間にとって忌むべき存在。それを利用してまで生き延びようとするリリン。僕にはわからないよ。」

と呟きます。

アダムは南極で発見され、セカンドインパクトを引き起こした第1使徒であり、第3から第17使徒はアダムの力を継承しています。また、エヴァンゲリオンも初号機以外のはアダムを元に造られているのです。
使徒の脅威に怯え、しかしその使徒の元になっている存在の力を揮って自らが生き永らえようとしている人類をリリンと呼び、カヲルはリリンのそれが理解できないと言っているのでした。
のちに、リリンが第18使徒であり、リリスから生まれた唯一の使徒であることが分かります。

忌むべき存在の力を使ってまでも生き延びようとするリリンである人類に、生きている限り利用されることを考えると、生と死が等価値になってしまい、人類を滅ぼすほど自らが生きたいという欲を持てず、絶対的自由を手に入れられる死を選んだのかと思います。
ただ、A.T.フィールドの原動力はリビドーとのことなので、欲がないということより、生とは逆のベクトルに強い欲を持っていたということなのかもしれません。

「彼は死を望んだ。生きる意志を放棄して見せ掛けだけの希望にすがったのよ。」

第弐拾四話「最後のシ者」での葛城ミサトの言葉。

人類補完委員会から派遣されたフィフスチルドレンである渚カヲルの素性を怪しく思っていたミサトでしたが、無人の弐号機がセントラルドグマを降下し、パターン青のA.T.フィールドの発生を感知したことにより、使徒の襲来を知ります。あまりにも強いA.T.フィールドに司令所からセントラルドグマの中をモニターすることができないくらいでした。

のちにカヲルが第17使徒タブリスだということが分かります。
カヲルの魂は第1使徒アダム、身体はゼーレが与えたものであり、ゲンドウの裏切りを察知したゼーレの思惑のままにターミナルドグマのアダムと対峙しますが、アダムとされていたのが第2使徒リリスであると分かると、自ら望んで初号機を操縦する碇シンジの手にかかって亡くなりました。

カヲルの生き続ける運命と、カヲルが生きつづければ人類は滅びること、そして死によってカヲルは絶対的自由を手に入れられること。
それらのカヲルの言葉はシンジには理解できずに、心を許した少年を手にかけて打ちひしがれていました。
生き残るべきはカヲルの方だったと悔やむシンジに、

「彼は死を望んだ。生きる意志を放棄して見せ掛けだけの希望にすがったのよ。」

とミサトは声をかけ、シンジはミサトが冷たいと小さく責めました。

カヲルが残るか人類が残るか、その二択の中で自らの死を持って絶対的自由を手に入れたカヲルの決断を「見せ掛けの希望」と言い切るミサトは潔すぎる気もしますが、もしかしたらカヲルも人類も生き残る方法を探っていけたのかもしれませんね。